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要求分析、現状把握、そして要件定義
-木達 一仁の『Web標準に準拠したサイト構築』 第2回

Web標準に準拠し、(X)HTMLとCSSでサイトを構築する際のワークフローやポイントをご紹介するシリーズの第2回では、前回ご紹介した7つのプロセスのうち最初の3つ、要求分析に始まり現状把握から要件定義にいたるまでの各プロセスに焦点を当てます。これらはいずれも、Web標準準拠という前提の有無にかかわらず極めて重要なプロセスだと思いますが、Web標準という視点から要点をまとめてみます。なお本コラムでは、既存のサイトの再構築を前提とします。

1.要求分析

主にヒアリングを通じ、サイトあるいはコンテンツへの要求を分析します。この要求には、情報を発信する側と受信する側双方のニーズやゴールが含まれます。ことWeb標準に関していえば、それに準拠することでさまざまなメリットを享受することが期待できるわけですが、情報発信側でWeb標準に最も期待するものは何か、つまりWeb標準準拠の動機を明確にしておく必要があるでしょう。それがひいては、プロジェクトにとってのゴールの一部にもなります。

Web標準準拠により、いわゆるフルCSSレイアウトへ移行する場合、印刷時への対応、すなわちprintメディア向けのスタイルシートを別途用意する必要の有無は、確認しておきたいポイントのひとつです。移行によってimg要素としてマークアップされていた画像のうち、純粋に装飾としての機能しか持たないものについては、特定要素の背景画像としてCSSのbackgroundプロパティなどにより指定されることになります。その結果、画面上と印刷した紙面上の見た目のギャップが大きくなる傾向にあるからです。

サンプル画像:CSSで印刷用のスタイルシートを用意した際の、ブラウザ画面での見栄えと印刷時のおける見た目とのギャップ

ほかにも以下のような項目をこの段階で分析しておくと、以後のプロセス、特に基本/詳細設計プロセスでより効果的に設計を行うことが期待できると思います。

  • 各種ガイドラインの有無やその継承の必要性
  • 現状の運用体制や運用状況(ワークフロー)
  • 各コンテンツの更新頻度や更新ボリューム
  • Web標準準拠後の運用方針

2.現状把握

要求分析を踏まえて、既存コンテンツの現状を把握するのが現状把握プロセスです。たとえデザインガイドラインやコーディングガイドラインが存在していたとしても、何らかの理由で規定済みの内容と実態が乖離していることも無いとはいえないでしょうから、程度はさておきスコープにある個々の(X)HTML文書を文書構造に着目して精査したほうが良いでしょう。フルCSSレイアウトに移行する過程で、新規に画像を作成する場面は往々にしてあります。それに備え、ディレクトリやファイルの配置規則、命名規則なども押さえておく必要があります。

このプロセスを通じて把握すべきさまざまな現状のなかでも、Web標準絡みでひときわ重要なのは、サイトを訪れるユーザの利用しているユーザーエージェント。Internet Explorer(以下「IE」)やMozilla Firefox、Safariといった視覚系ブラウザもユーザーエージェントに数えられますが、その種類だけでなくバージョンもセットで調べる必要があります。可能であれば、直近の3ヶ月から1年程度は遡ってアクセスログを解析し、利用率の変動も把握したいところです。

3.要件定義

要求分析および現状把握の各プロセスで得られた結果を受け、サイト構築における要件を定義します。マークアップやスタイルシートを作成するうえでの各種指針のほか、ターゲットブラウザを選定するのも、この要件定義プロセスです。

ここでいうターゲットブラウザとは、CSSでもってビジュアルデザインを意図したとおりに制御する対象としてのブラウザを意味します。現状把握プロセスで実施したログ解析結果より得られた事実に基づき、ターゲットブラウザを選定します。より古い、CSS仕様への対応が不十分なブラウザをターゲットブラウザに含めると、スタイルシートを作成する際の工数が増えてしまうことになります。

近い将来、Web標準に一層準拠したバージョンであるIE7がリリースされる予定であることを考慮するならば、過去のブラウザよりはこれから登場するブラウザに重きを置いて選定を行ったほうが良いでしょう。多くのブラウザがWeb標準準拠を念頭に開発とリリースがなされており、いずれはブラウザ間の実装差異も解消に向かうと期待されているからです。

もちろんこれは一般論であり、アクセスログの解析結果次第では、比較的古いブラウザをターゲットに含める必要性の大きい可能性もあるでしょう。その場合、一部のレイアウトにテーブル要素を用いるような、ハイブリッドレイアウトと呼ばれる実装も選択肢のひとつとして検討することが必要かもしれません。Web標準それ自体は目的ではなく手段であり、道具なのですから、サイトとそのユーザが達成すべきゴールは見失わないようにしたいものです。

次回、設計プロセスについて、設計内容の文書化の重要性を中心にお話します。

[次回へ続く]

プロフィール

顔写真:木達一仁

木達一仁(きだち かずひと)
株式会社ミツエーリンクス フロントエンド・エンジニア。Web Standards Project(WaSP)メンバー。2004年2月より、株式会社ミツエーリンクスに参画。Webコンテンツの実装工程に多数従事した経験をベースに、Web標準の普及・啓蒙活動を展開している。書籍『Designing with Web Standards ― XHTML+CSSを中心とした「Web標準」によるデザインの実践』、『Web標準デザインテクニック即戦ワークブック―XHTML+CSSを正しく賢く書くための15問』(ともに毎日コミュニケーションズ)などを監訳。

株式会社ミツエーリンクス:http://www.mitsue.co.jp/

木達一仁の『Web標準に準拠したサイト構築』

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