このページの先頭です
ここから本文です 実践ノウハウ

アクセシビリティとWeb標準
- 植木 真の『アクセシビリティとWeb標準、SEO』 第2回

アクセシビリティを構成する3要素

アクセシビリティとWeb標準との関係を語る前に、まずアクセシビリティを構成する3つの要素についてお話しましょう。W3Cでアクセシビリティ分野を担当しているWAI(Web Accessibility Initiative)のサイトに、『Essential Components of Web Accessibility』という解説ページがあります。日本語に訳せば、「Webアクセシビリティに必要不可欠な構成要素」となるでしょうか。この考えをもとにして、WAIでは以下の3つのアクセシビリティ・ガイドラインを策定しています。

Web制作者はオーサリングツールを用いてWebコンテンツを制作し、そのWebコンテンツはユーザーエージェントを通じてユーザーに提供されます。この流れの中でどれか一つでもアクセシビリティを損なうものがあれば、ユーザーに提供されるWebコンテンツはアクセシブルではなくなるのです。つまり、Webコンテンツのアクセシビリティを実現するためには、主にこの3つがそれぞれの役割を果たす必要がある、というわけです。

オーサリングツールとは?

もう少し詳しく見ていきましょう。まず、オーサリングツールとよばれるものとしては、具体的に以下のようなものが挙げられます。

  • WYSIWYG HTML/XML エディタ:いわゆるホームページ制作ソフト(例:Dreamweaver、IBM ホームページビルダー、など)
  • マルチメディア制作/編集ツール:動画などのマルチメディア・コンテンツを制作/編集するツール
  • CMS:コンテンツ・マネジメント・システム(Content Management System)
  • blog:最近流行のblog(ブログ)も、Webコンテンツを生成する、という意味でオーサリングツールといえるでしょう(例:Movable Type、Word Press、など)

Webコンテンツとは?

Webコンテンツは、皆さんがインターネット上などで提供している情報やサービスなどを指します。

  • Webサイト
  • Webアプリケーション
  • Webサービス
  • マルチメディア・コンテンツ

ユーザーエージェント

そして、ユーザーエージェントとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • ブラウザ:いわゆるWebブラウザ(例:Internet Explorer、Firefox、など)
  • 支援技術:音声ブラウザやスクリーンリーダーなど(例:IBMホームページリーダー、JAWS、PC-Talker、など)
  • メディア・プレーヤー:動画などを再生するソフトウェア(例:Windows Media Player、QuickTime、RealPlayer、など)
  • プラグイン:(例:FlashPlayer、AdobeReader、など)
  • 検索エンジンのロボット:GoogleやYahoo!などに代表されるロボット型の検索エンジンのロボット

最後の "検索エンジンのロボット" というのは、ユーザーに直接コンテンツを提供するわけではないので、その点においては他のものとはやや異なりますが、(X)HTMLのソースコードを解釈するソフトウェアという点でユーザーエージェントの一つとして考えられています。実際に、W3CのHTMLの勧告文書にある "ユーザーエージェント" の用語定義にも挙げられているのです。

アクセシビリティとWeb標準との関係

先に挙げたWAIのサイトでは、3つのアクセシビリティ・ガイドラインは、どれもWebの基本となる技術仕様を基にしており、W3Cの技術仕様(HTML、XML、CSS、SVG、SMIL、など)と連携していると述べられています。ここに、アクセシビリティがWeb標準を構成する要素の一つであることが見てとれるでしょう。つまり、Web標準という、いわば共通のルールに則って、オーサリングツール、Webコンテンツ、ユーザーエージェントがそれぞれ開発・制作されることで、より多くのユーザーが同じようにコンテンツを利用できるようになることにつながるのです。そして、それが土台のようになって、その上にアクセシビリティが実現される、というわけです。

3つそれぞれが "Web標準準拠" という1つの方向へ

さて、昨今のキーワードとして、"Web標準(Webスタンダード)" というのがあることは皆さんもすでにご存知のことでしょう。この "Web標準" というキーワードですが、雑誌やWebサイトなどで語られるときには、WebコンテンツのWeb標準準拠、という意味が多く、その最たる例が XHTML+CSSという新しい制作手法です。しかし、"Web標準" というのは、何もWebコンテンツやコンテンツ制作者だけの話ではありません。先に挙げた、Webアクセシビリティを構成する3要素のオーサリングツールやユーザーエージェントにも同様のことがいえます。

例えば、ユーザーエージェントでいえば、Firefoxというブラウザが、これまでInternet Explorerのほぼ独占状態にあったシェアを少しずつ奪いながら、そのシェアを伸ばしつつあります。このFirefoxは、いち早く "Web標準準拠" というキーワードを掲げて、それが支持されています。そして、Internet Explorerも次期バージョンのIE 7ではWeb標準準拠という姿勢を打ち出してきました。数年前にはブラウザ戦争とよばれた時代があり、各ブラウザは独自に機能を拡張して差別化を争っていましたが、それぞれに対応しなければならなかった制作者側が振り回されたことはまだ記憶に新しいところです。しかし、今後登場してくる新しいブラウザは、そのほとんどがFirefoxやIE 7の例を見れば分かるように、Web標準準拠というのが基本になってきます。

また、オーサリングツールに関しても、プロのWeb制作者の間では圧倒的なシェアを誇るアドビシステムズの Dreamweaver は、標準規格に準拠した Web サイト / Web アプリケーションを構築するためのツールとして、バージョンアップを重ねてきています。

このように、Webコンテンツの制作者やWebサイトの運営者だけでなく、オーサリングツールの開発者、ユーザーエージェントの開発者も、それぞれの立場で "Web標準" に準拠していこう、という大きな流れが、国内外を問わずに急速に進んでいるのです。

この "Web標準" というテーマについて、数々の書籍や雑誌記事を執筆されており、日本を代表する第一人者である、大藤 幹氏に、『Web標準の基礎知識』というテーマで、このサイトで連載をスタートしていただけることになりました。そのテーマ通り、"Web標準" というキーワードの基礎を分かりやすく解説していただいていますので、是非ご覧になってください。

[次回へ続く]

筆者プロフィール

写真:植木真

植木 真(うえき まこと)
主に大手企業サイトのアクセシビリティ対応をサポートするコンサルタント。2004年10月に株式会社インフォアクシアを設立。2004年6月に制定された JIS X 8341-3 の策定作業に従事した後、現在は W3C/WAI の WCAG ワーキンググループで『WCAG 2.0』の策定作業にも参画している。また、WAT-C(Web Accessibility Tools Consortium)の共同発起人として、オーストラリア、アメリカ、イギリスのアクセシビリティ専門家ともコラボレーションしている。

株式会社インフォアクシア:http://www.infoaxia.co.jp

植木 真の『アクセシビリティとWeb標準、SEO』

このページの先頭へ▲