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アクセシビリティとSEO
- 植木 真の『アクセシビリティとWeb標準、SEO』 第3回

アクセシビリティを確保すると、SEO効果がある

ウェブクローラーは、基本的に全盲ユーザーと同じだ。

君のサイトがアクセシブルでないほど、Googleやその他の検索エンジンから訪れる人が少なくなる。

これは、書籍『DESIGNING WITH WEB STANDARDS』で、その著者のJeffrey Zeldman氏が述べている言葉です。"ウェブクローラー" というのは、いわゆる検索エンジンのロボットのことを指します。

また、アクセシビリティを確保したらなぜか検索結果ページのランキングが上がった、という話もよく聞かれるようになってきました。これについては、筆者も数年前からセミナーや雑誌記事などで取り上げてきたことですが、最近こういった話を耳にする機会が多くなってきたように思います。JIS X 8341-3 の制定により、アクセシビリティの確保に取り組むサイトが増えてきたことで、はからずもSEOにも効果があるという事例や実体験も増えてきた、ということのあらわれなのでしょう。

なぜ、アクセシビリティ確保とSEO効果に関係があるのか

HTML user agent
An HTML user agent is any device that interprets HTML documents. User agents include visual browsers (text-only and graphical), non-visual browsers (audio, Braille), search robots, proxies, etc.

これは、W3CのHTML 4.01勧告文書(仕様)にある用語定義での "ユーザーエージェント" に関する説明です。ユーザーエージェントとは、HTMLドキュメントを解釈するあらゆるデバイスで、具体例として、ビジュアル・ブラウザ(テキストブラウザとグラフィカル・ブラウザ)、ノンビジュアル・ブラウザ(音声ブラウザや点字ピンディスプレイ)、そして検索ロボットも挙げられています。つまり、検索ロボットもブラウザと同様にユーザーエージェントの一つとして、(X)HTMLのソースコードを解釈している、という言い方ができます。

ここに、アクセシビリティを確保すると、SEO効果もある、という理由が説明されているのです。つまり、端的に言えば、音声ブラウザが読み上げることのできない情報や解釈することのできない構造や意味は、GoogleやYahoo!などの検索エンジンのロボットにも理解できない、ということです。そのため、アクセシビリティのガイドラインにある項目の中で、主に音声読み上げソフトへの配慮とされているものの多くは、そのまま検索エンジンのロボットに対しても効果があり、結果として、意図していなかったとしても、アクセシビリティを向上させることで、検索結果ページでのランキングも上昇する、というわけです。

キーワードは、"Machine Readable/Understandable"

従来のWebコンテンツが、特に音声読み上げにおけるアクセシビリティを損なってきた大きな原因は、サイト運営者もコンテンツ制作者も、Webコンテンツを "ユーザーが画面で見るもの" としてしか考えていなかった、と言えるでしょう。そして、このことが同時にSEOに対してもマイナスとなっていたというわけです。これを "Human Readable/Understandable" と表現することがあります。

しかし、アクセシビリティやSEOを考慮すると、今後のWebコンテンツは "Machine Readable/Understandable" でもあるべきでしょう。つまり、ブラウザの画面を見ている人間だけでなく、ソースコードだけを見ているソフトウェアやプログラムにも理解できるようにすることです。例えば、サイト診断などでいろいろなサイトをチェックしていると、画面での見た目では見出し"のようなもの"があるのに、ソースコードには見出しであることを示す h1要素やh2要素が全く使用されていない、というサイトがまだまだ多いのが現状です。これなどは、 "Human Readable/Understandableだけど、Machine Readable/Understandableではない" 典型的な例ですし、alt属性で代替テキストを記述していないimg要素(画像)などもそうです。

JIS X 8341-3 と SEO との共通点

アクセシビリティとSEOとの共通点を、JIS X 8341-3 にある項目から具体的に幾つか挙げてみましょう。

  • 仕様に準拠した(X)HTMLのソースコード [5.1 a)]
  • 見出しのマークアップ [5.2 a)]
  • ページの内容を示す固有なページタイトル [5.2 e)]
  • リンク先の分かるリンクのラベル [5.3 g)]
  • 画像の代替テキスト [5.4 a)]
  • リンク画像の代替テキスト [5.4 b)]
  • 単語内のスペース/改行 [5.9 e)]

これらは、ほとんどのWebページに該当する項目であると同時に、サイト診断などでは意外とスコアが低くなることの多い項目でもあります。そして、アクセシビリティに取り組み始める際には、その取り組みやすさから優先度を高くすることが多い項目でもあります。これらに配慮してコンテンツを制作していくことで、アクセシビリティを確保/向上できるのと同時に、画面で伝えている情報を検索エンジンのロボットにもきちんとソースコードだけで伝えることができるようになるのです。

アクセシビリティを確保しないと大きな機械損失になる

冒頭で紹介したJeffrey Zeldman氏の、"君のサイトがアクセシブルでないほど、Googleやその他の検索エンジンから訪れる人が少なくなる。" という言葉の意味が何となく分かっていただけたと思います。「音声ブラウザ? それを使っているユーザーが一体何人いると言うんだ。ウチのサイトには関係ないよ。」という担当者さんが時折いらっしゃいますが、Zeldman氏も指摘しているように、そういうサイトは音声ブラウザのユーザーだけではなく、GoogleやYahoo!からやってくる可能性のあった無数のユーザーが訪れる機会までも失っていることになるのです。皆さんは、"木だけを見て森を見ず" になっていませんでしたか?

JIS X 8341-3 などのアクセシビリティ・ガイドラインにある項目と、SEO対策との共通点はいずれ近いうちにこのサイトでより詳細な情報を提供できればと考えています。また、検索結果ページのランキングを決定する大きな要因として、"リンクポピュラリティ" といって、そのページがどれだけ多くのサイトからリンクされているか、というのがあります。ですから、ソースコードだけで全てが解決するというわけではもちろんないのですが、少なくとも自分たちの手で確実に対処できることとして、ソースコードの見直しはしておくべきです。アクセシビリティとSEOの共通点を頭に入れて、機会損失を未然に防ぎましょう。

さて、この "SEO(検索エンジン最適化)" について、日本国内で初のSEO書籍を執筆し、雑誌記事や講演などでもおなじみの住 太陽氏に、『トリックに頼らない本当のSEO』というテーマで、このサイトで連載をスタートしていただけることになりました。そのテーマ通り、GoogleやYahoo!に振り回されない "本当の" SEOについて分かりやすく解説していただきます。是非あわせてご覧ください。

[次回へ続く]

筆者プロフィール

写真:植木真

植木 真(うえき まこと)
主に大手企業サイトのアクセシビリティ対応をサポートするコンサルタント。2004年10月に株式会社インフォアクシアを設立。2004年6月に制定された JIS X 8341-3 の策定作業に従事した後、現在は W3C/WAI の WCAG ワーキンググループで『WCAG 2.0』の策定作業にも参画している。また、WAT-C(Web Accessibility Tools Consortium)の共同発起人として、オーストラリア、アメリカ、イギリスのアクセシビリティ専門家ともコラボレーションしている。

株式会社インフォアクシア:http://www.infoaxia.co.jp

植木 真の『アクセシビリティとWeb標準、SEO』

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